2010年4月15日木曜日

ケンペの連鎖機構

矢野健太郎:「角の三等分」(ちくま学芸文庫)の注に, 一松先生がケンペの連鎖機構というものがあると書いておられる.

googleで探すと, アニメーションもあるようだが, 私としては, 自分でも描いてみずにはいられない.



Kempeのリンケージは, この図のように, 短い2辺 x と長い2辺 y として, 4本の棒を蝶番でつなげたものらしい. 平面内でくねくねと変形するわけだ. 幾何学的には,角θは0からπまで任意の角がとれる. 実際に物理的なリンケージを作ると, 引っ掛かったりして難しいに違いない.

点Oの座標は(0,0), 点Aは(x,0)である. 点BとCの座標を知りたい. ∠AOB=θとすると, Bは(y cos(θ),y sin(θ))である. すると角φ=tan-1(y sin(θ)/(y cos(θ)-x))と得られる. 従ってBからCを見込む角は2φとなり, Cの座標が得られる. (y cos(θ)+x cos(2φ), y sin(θ)+x sin(2φ)). 座標が得られたら, O-A-C-B-Oと4辺形を描く.

点Cは点Aを中心とした円を描く. 点Bは点Oを中心とした円を描く.その位置を, &thetaの関数と見ると, 点Bは普通の三角関数 cos と sin だが, 点Cの方は, いかにもリンクという曲線になる.



基本形が出来たら, 次にOを中心とし, 座標をθだけ回転し, xの長さを前のyの長さにして, 4辺形を描き, これをもう一度繰り返すと下の図になる. 実はyx の2の立方根倍にして描いてあるので, 最初の x に対し, 最後の y は2倍になっている. 赤い線はそれを示す.



一松先生によれば, このリンケージは, 角の三等分も出来るし, 2の立方根の比もあるので, 2倍の体積の立方体も作れる優れ物らしい.

さて, このリンケージのアニメーションもProcessingで書いた.

http://playground.iijlab.net/~ew/kempe/kempe.html

に置いてある. 上の図のB''に対応する辺りをマウスで動かすと, リンケージ全体が動く.

追記: 教養学部2年の冬学期に矢野健太郎先生(1993年没)の数学の講義があった. その学期のもう1つの数学の講義は彌永昌吉先生(2006年没)の担当であった. 一松信先生はご健在で, プログラミング・シンポジウムに毎年参加されている.

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