2011年4月2日土曜日

古い計算機

このブログに何回か書いた昔の計算機は, タイガー計算器のような乗除算は出来ないが, 簡単な加減算ならお手の物だ. そういう計算機をウェブページで探していたら, Sterling Dial-A-Maticというのを見つけた. これが理科大の近代科学資料館にあったかどうかは分からぬ.

John Wolffさんのウェブページには, 1950年代かとある.



この画像を頂いたもとのURLが思い出せないのが申し訳ない.

プラスティック製だから, 古いとはいえない. 古いのと同じく簡単なのである. 簡単なので, 筆箱に蓋に組込める. この計算機を使うにはスタイラスがいるが, スタイラスが筆箱に仕舞えるのも都合がいい.

この計算機は十進4桁. 右からunits(一の桁), tens(十の桁), hundreds(百の桁), thousands(千の桁)である. それぞれの桁にnを足すには, 周囲に書いてある外側の大きい数字のnのところの穴にスタイラスを差し, 馬蹄形の最後まで右に回す.

nを引くには, 内側に書いてある小さい数字のnの穴にスタイラスを差し, 左に回す.

すると上の穴にその桁の答が現れる.

予想されるように, 繰上げ, 繰下げは正しく反映される.

2桁だけを書き出すと次の図だ.



中が気になるが, 繰上げ処理に詳しいウェブ にこの計算機の説明があり, そこからUS Patent 2,797,047に辿り着ける. するとこういう図を始めいろいろ見つかる.



特許の図だからごちゃごちゃしているし, 説明も回りくどい. 今回はそれを私なりに説明したい. 十進歯車の相当する円盤の上方にカムのような切り込みがあり, それに噛み合う上側の歯止めや下側のバネみたいなものは, 回転しすぎ防止と位置の調整用のものなので省略し, 特許の図の繰上げに本質的な部分を描くとこうなる.



この赤で示した蓋を外すと



になる. 右が一の桁のダイアル, 左が十の桁のダイアルで, その状態が真上にある数字で読めるように, 数字は放射状に書いてある.

中央に繰上げ用の伝達歯車があり, 歯は十の桁のダイアルの下の歯車と噛み合っている. 伝達歯車には, 緑で示す10本のピンが立っていて, またダイアルの2の数字の下あたりに, これも緑で示す突起とぶつかる高さになっている.

ダイアルが36度左回転して, 0から9の状態に変ると, 突起はピンに当って, 伝達歯車を36度右回転させる仕掛けである.

ここが繰上げ機構の微妙なところで, 一の桁のダイアルの繰上げは, 伝達歯車に伝わるが, 伝達歯車の回転は一の桁の突起に当ってはいけないのである. 従って, 突起はピンの外側の包絡円のすぐ外側に控えている.

この構造で伝達歯車と十の桁のダイアルを36度ピッタリに回すのはむずかしく, 従って, 特許の図では, 針金のバネでダイアルの下の歯車を, 定位置に止めようとする.

もう一つ微妙なのは, 一の桁のダイアルを, 勢い良く回転して, 繰上げを伝えた場合である. 突起がピンを急に押すと, 36度どころか, 72度まで回転してしまうかも知れない. これを防ぐのが, ダイアルの上の切り込みと歯止めである.

歯止めの動きはまだよく理解してはいないが, そういう機能である.

私がProcessingで描いたシミュレータが,
http://playground.iijlab.net/~ew/dialamatic/dialamatic.html
にある.

起動時には, 0 0 の状態である. 一の桁に1を足すには, 一のダイアルの大きい数字の横の円をクリックすると, 青色に変る. 右下の + の箱をクリックすると1が足される仕掛けだ. 引くには左下の - の箱をクリックする.

クリアの機能はない.

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