2011年8月26日金曜日

ベクトルの和

「とっておきの数学パズル」に, 多面体の各面の, 直交外向きで, 面積に比例する大きさのベクトルの和が0になることを証明せよというのがあった. Q5.13

多分そうなりそうだが, 証明となると....

「いかにして問題を解くか」には, 「一様な四面体の重心を求めよ」という問題が解けなければ, 平面の類似の問題「一様な三角形の重心を求めよ」を考えてみるという教訓がある.

その伝でいくなら, 多角形の各辺の, 直交外向きで, 辺の長さに比例する大きさのベクトルの和が0になることを証明せよとなる.

たとえば, 下の図の左は, 最も簡単な多角形の三角形の場合で, 辺の長さをa,b,cとする. (5:3:4になっている.) 従って, 外向きのベクトルは, 黒い矢印のように出来る. ベクトルの和を計算するのだから, aの先端までbの付け根を移動し(青矢印), その先端までcの付け根を移動する(青矢印)と, 3つのベクトルで構成される三角形は, もとの三角形と相似になり, cの先端はaの付け根に一致し, 和が0なことが分かる.



しかし, こういう方法はどうだろうか. (図の右)

元の三角形の左右方向をx軸. 上下方向をy軸とする. 各ベクトルのx, y成分を考える. bはx成分しか, cはy成分しか持たない. aは, 図にax, ayと書いて示したx成分とy成分がある. ベクトルaの大きさが, 斜面aの長さに比例するなら, axはaの斜めの面の, x方向からみた断面(青線で示す)の長さに比例するわけで, この断面の長さはbの辺の長さに等しく, 従ってaxの大きさはbの大きさを同じで方向が反対である.従って, ベクトルのx成分の和は0.

同様にして, y方向の成分の和も0. 従って, ベクトル全体の和も0になる.

これを3次元の問題でも使ってみよう. ある面の, その面積に比例した直交外向きベクトルaのx成分は, ベクトルとx軸のなす角をθとすると, a cosθ, この面のx方向から見た断面積もa cosθのはずである.



したがって, この多面体の直交外向きのベクトルのx+方向の和は, x+方向から見た断面積になり, x-方向の和は同じ断面積で反対向きになり, x方向全体は打ち消す.

y,z方向も同じわけだから, 結局和は0というので証明出来たのではないか.

ところで, ある時気づいた, 多面体を水の中に置くという考えも棄て難い. ある面に立てた, 面積に比例する直交外向きのベクトルは, その面に働く水圧に相当する. 水中の多面体が流れないのは, その水圧の総和が0だからだと思うと, この証明は終りらしいが.

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