EDSACは大学で作った計算機なので, 入出力は市販の機器を用いることになる. 当時はもちろんテレタイプは存在していたから, 当然それらを使うわけだ.
その頃 欧米で使われていたテレタイプは, 英大文字と数字と若干の記号のもので, 5単位テープが標準であった. このコードはInternational Telegraphic Alphabet No.2 (ITA2)という. (規格はここのFreely available itemsのEnglishから得られる) この種のテレタイプは昔は国際電電にいくと見られたがとおの昔に姿を消した.
テレタイプとしてはこのような形であった.
なかなか可愛らしくて1台ほしい. 数年前にアメリカのある空港で耳の不自由な人のための似たようなキーボードを見たことがあった.
コード表は次のとおり.
Figure shift(FIGS)を打つとその後は右の数字と記号を送受信することになる. Letter shift(LTRS)で英大文字になる.
このコードの特徴は, 使用頻度の高い文字は1が, つまりテープの孔が少ないことだ. Wikipediaでletter frequencyを見て, 頻度の順に孔の数をならべると
e t a i n o s r l d h c u m f p y g w v b k x j q z 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 4 3 4 4 3 4 2孔が少ないとテープが丈夫なのか, ごみを減らそうとしたのか知らないが, Morseコードと同様な精神で出来ている. ITA2の特殊記号も欧文Morseコードと同じである.
さてEDSACではこういう機器を使おうとしたが, 数字のコードが
P 0 01101 Q 1 11101 W 2 11001 E 3 10000 R 4 01010 T 5 00001 Y 6 10101 U 7 11100 I 8 01100 O 9 00011と数値に関係がない. そこで最上段の文字のコードを00000から01001に変更した. ただそうするとP 0のコードはまったく孔が開かず, ブランクテープと同じになってしまうので, テープでは一番左の位置はコードが0の時に孔が開くようにした.
変更は最小にしたらしいが, T→F→Y→T, O→D→W→O, R→X→U→S→R, I→A→I, P→B→E→P, Z→Q→Zと交換した. ITA2と同じなのはH, N, M, L, G, C, V, J, Kである.
これがEDSACの文字コードだ.
左の方がPerforator, テープ鑽孔機で, そのすぐ右がTeleprinter, 出力用タイプライターである. 図形文字でない機能鍵のFigure shiftもプログラムでは文字として使いたいというので, 鑽孔機にはπの文字がついているという具合である.
EDSACの最初の本のコードでは, 鑽孔機の記号の位置はタイプライターのそれとずいぶん違っていた. その辺は上の表では省略した.
EDSACのプログラムでは命令を A 3 F のように書くが, 数字の前にFigure shiftを打つかというとそうではない. 命令の最初は文字と思い, そのあとPQWERTYUIOJが続くあいだは数字として扱う. Jは10として使え, そう使うプログラムを存在する.
一方数値だけの疑命令でも, 先頭にはPを書かなければならない. 命令はコード表のFからVまでの文字で終わる. π, S, Z, Kには別の機能があった.
EDSACはこのようにコードを変更したが, 我々のパラメトロン計算機では, コードは市販の機器のままで, あとはプログラムで挑戦するという方法をとった. 日本国内では6単位が標準だったので文字数も多く, プログラムが見やすいシステムが作れた. その話はまたいつか.
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