2013年7月18日木曜日

面積計を使う調和解析器

世の中には面白いことに気付く人がいるものだ.

下の図は適当に描いた周期関数である. 関数は赤, 緑, 青, 橙の各点を通り, 赤に戻る. 左端の赤い縦線はθ=0のところで, zero-edgeという.



これが透明な紙に描いてあるとし, 幅が丁度2πだから, 半径1の, これも透明な円柱に巻き付けたとする. AがA'に, BがB'に出会う. (下の図の上の部分は左がまだ巻く前, 右が巻いたところ.)



巻いた円柱は, zero-edgeが上に來るように寝かせる. それが右だ. 4つの点は先ほどと同じで, 赤は真上にあり, 曲線は右へ進んで緑の点で縁に来る. そこから青を経て橙の点までは円柱の下の面を進み, 橙からは上の面を通ってzero-edgeに戻る.

下の部分は, 上の関数の図を横に2倍に延ばし, 右は前と同じ径の円柱にぐるぐると2度巻き, zero-edgeが上になるように置いたものである. 赤から右向きに出発, 裏の中央に緑が来る. 再び表側に来て青の点を通り, また裏で橙を通って赤に戻ることを示す.

このようにして出来た透明な円柱を, 上や左から見たのが次の図である.



A1は1回巻きを上から見たもの(zero-edgeが中央にある), B1は1回巻きを左から見たもの(zero-edgeが右端にある), A2, B2は2回巻きをそれぞれ上と左から見たものである.

そこで面積計を取り出し, 各々の閉曲線の面積を計測する. 面積計算のプログラムは時計回りに追跡した時に正の値を返す. A1, A2は赤から緑へ行くのが時計回りで, ほぼ時計回りだから, 面積は正になり, B1, B2は赤から緑へ行くのが反時計回りだから, 面積は負になる.

これらの図を描くプログラムで, 途中の点の座標を記録しておいて, 面積を計算すると,
A1: 6301.53662
A2: 12601.5176
B1: -6365.42822
B2: -12728.2783

これらの名前から想像できるように, この面積は最初の周期関数のフーリエ係数の何倍かになっているのである. (最初の曲線はA1=A2=B1=B2=0.5だった.)

もっと先の方の係数An, Bnを求めるには, 元の関数の図を横にn倍に延ばし, 円柱にn回巻きにし, 上や左からみた面積を計測すればよい.

こんなややこしい図はやめて, 単一の三角関数で実験してみよう.

Cos θの場合. A1=1(他は0)でテスト


A1: 12668.2227
A2: -127.295372 ≈ 0
B1: 0.499938339 ≈ 0
B2: 1.99811935 ≈ 0

A1は円柱の半径を半径とする円である. これらの図は2πを400(point)にとって描いたので, 円柱の半径wは200/π.
正確な値は(200/π)2×π=12732.3954

Sin 2θの場合. B2=1(他は0)でテスト


A1: -0.99832052 ≈ 0
A2: -1.99973631 ≈ 0
B1: 0.00795254577 ≈ 0
B2: -25460.5547

このB2と前のA1で, 図の形は同じ円なのに, 面積が違うのは, B2の方は円周を2度回っているので, 面積が2倍になったのである

似たようなテストをCos 2θ, Sin θでもやって, 円の面積を計算して置き(Sin 2θ, Cos θの値と符号が違うだけだが), 最初の関数のテストで得られた面積を割って見ると

(define a1 6301.53662) ;最初の関数の面積
(define a2 12601.5176)
(define b1 -6365.42822)
(define b2 -12728.2783)

(define cosa1 12668.2227) ;単一関数の面積
(define cosa2 25333.3145)
(define sinb1 -12731.8721)
(define sinb2 -25460.5547)

(/ a1 cosa1) => .49742862666915383 ;最初の関数の係数
(/ b1 sinb1) => .4999601134855886
(/ a2 cosa2) => .4974286961147543
(/ b2 sinb2) => .49992148442861695
となって, 元の係数が全部0.5であったことが判明する.

ところで, このブログでは, 平面図や側面図を描いたので, 面積計で計測出来たわけだが, 円柱に関数の図を巻き付けただけでは, 面積計は使えないのではという疑問は当然だ. 実はそういうことで, アイディアはいいのだが, 装置としては実現されなかった.

Cliffordという人が言い出したそうで, Proceedings of the London Mathematical Societyのvol.v(1890年頃)に載っているらしい.

0 件のコメント: